FILE 05 ── RATIONS
生ごみコンポストに投資して、失敗した話
「生ごみが土に還る」「ごみ袋が減って地球にやさしい」。家庭用コンポストの紹介記事は、たいてい明るい。だが編集部が実際に容器と資材をそろえて始めた結果は、はっきり言って失敗だった。臭い、虫、混ぜる手間、そして出来上がるまでの長さ。ここではその失敗を、次に誰かが同じ出費をしないための記録として残しておく。
紹介記事が語らない、三つの現実
1. 臭いは「やり方次第」で消えるほど甘くない
コンポストの解説では「水分と空気のバランスを保てば臭わない」と書かれる。理屈としては正しい。好気性の微生物が働いていれば、生ごみは比較的穏やかに分解される。問題は、そのバランスを毎日の生ごみの量と水分に合わせて人間が調整し続けなければならないことだ。
水分の多い野菜くずが続けば、内部はすぐに酸欠になって嫌気発酵に傾く。そうなると、ドブのような、腐った玉ねぎのような臭いが立ち上がる。とくに日本の梅雨から夏にかけては、気温と湿度が高く、条件が一気に悪い方へ振れる。「臭わない」は、管理が完璧に回っているときだけの話だった。
2. 虫は来る。しかも見た目がつらい
蓋の隙間や通気口から小バエが入り、気づけば幼虫が湧く。屋外コンポストでよく見かけるのは、アメリカミズアブの幼虫だ。分解を助けてくれる側面もあるとはいえ、容器を開けた瞬間にうごめく大量の幼虫を見て平常心でいられる人は多くない。家族の理解を得るのも難しくなる。
3. 混ぜる手間と、使えるまでの長さ
定期的に切り返して空気を入れ、水分が多ければ乾いた資材を足す。この作業が、思っている以上に生活の時間を食う。しかも、投入した生ごみが畑やプランターで使える状態になるまでには数か月単位の時間がかかる。手間に対して得られる土の量は、ホームセンターの培養土一袋にも届かないことが多い。
コストで比べると、勝負になっていない
そもそも「肥料を自給する」という目的なら、比較相手はホームセンターの資材になる。乾燥鶏糞は大袋が数百円程度で並び、液体肥料は希釈倍率どおりに薄めるだけで成分が安定している。病気や虫のリスクも、未熟な自家製堆肥より読みやすい。
| 家庭用コンポスト | 市販の鶏糞+液肥 | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 容器・資材で数千円〜 | ほぼゼロ(必要な分だけ買う) |
| 毎日の手間 | 投入・切り返し・水分調整 | なし |
| 臭い・虫 | 管理が崩れると一気に出る | 袋のまま保管すれば少ない |
| 成分の安定 | 投入物次第でばらつく | 表示どおりで計算しやすい |
| 使えるまで | 数か月〜 | 買ったその日 |
コンポストの価値を「生ごみを減らすこと」に置くなら、話は少し変わる。だが庭や畑があるなら、もっと単純な答えがある。
庭があるなら、穴を掘って埋めればいい
編集部が最終的に落ち着いたのは、生ごみは畑に穴を掘って埋めるという方法だ。容器も切り返しも要らない。土の中に入れてしまえば臭いはほとんど上がらず、時間とともに勝手に分解される。カラスや動物に掘り返されないよう、ある程度の深さに埋めて土をしっかりかぶせることだけ守ればいい。
畑がない集合住宅なら、自治体の可燃ごみに出すのが最も負担が少ない。無理に家の中で分解装置を回すより、生活全体のストレスは確実に小さくなる。
この失敗から引き出した原則
- 菌や微生物の機嫌に左右される仕組みは、管理コストごと抱え込むことになる
- 「自給」の比較相手は、市販の安い規格品。理想ではなく単価と手間で比べる
- 同じ目的をもっと単純な方法で達成できるなら、そちらを選ぶ
- VERDICT
- 不採用
- 理由
- 臭い・虫・手間に対して、得られる土が少なすぎる。生ごみは畑に埋めるか、ごみに出す。
では、もう使わなくなったコンポスト容器はどうするのか。その転用と、さらにもう一つの失敗は次の記事で扱う。