FILE 09 ── RATIONS

ネットで買う背脂は、台所のいちばん安い燃料になる

糧食実践

冷凍の豚背脂をネットでまとめ買いする。精肉としてはほとんど値が付かない部位だが、台所に置くと話が変わる。鍋で溶かせば白いラードになり、残りは醤油とにんにくで味付けすれば、ラーメン屋のあの「アブラ」になる。パスタ、チャーハン、ラーメン、そして揚げ物まで。編集部の台所では、背脂がいちばん安くて働く燃料になっている。

なぜ背脂なのか

背脂は業務用の冷凍品として流通していて、まとめて買うと単価が安い。脂は料理の満足感を大きく左右する要素で、少量足すだけで、安い赤身肉や鶏むね肉、袋麺の味が一段上がる。高い肉を買う代わりに、安い肉に脂を足すという発想だ。

さらに、ラードに加工すれば冷蔵・冷凍で長く持ち、生ごみも臭いもほとんど出ない。保存性と汎用性の高さは、備蓄食材としても優秀だ。

ラードの抽出:弱火でじっくり

  1. 解凍して細かく刻む。半解凍のほうが包丁が入りやすい。細かいほど脂が早く出る。
  2. 鍋に入れ、少量の水を加えて弱火にかける。水は焦げつき防止。蒸発しきると脂だけになり、ゆっくりと油が染み出してくる。
  3. 焦がさないように混ぜながら加熱する。強火にすると焦げ臭さが移る。脂身が縮んで薄く色づき、カリッとしてきたら終了の目安。
  4. こして保存容器へ。網やキッチンペーパーでこし、耐熱の瓶や容器に移す。冷えると真っ白に固まる。

火の扱いに注意

大量の油を長時間加熱する作業になる。その場を離れない、水滴を熱い油に落とさない、こすときは容器を安定した場所に置く。高温の油はやけどと火災の原因になるので、量は扱える範囲から始める。

こしたあとに残るカリカリの脂かすも捨てない。塩を振ればつまみになり、チャーハンや炒め物の具にもなる。

使い回しの例

料理使い方効果
チャーハンサラダ油の代わりにラードで米と卵を炒める米がコーティングされ、ぱらっとしてコクが出る
パスタにんにくと背脂でベースを作るペペロンチーノ風オリーブオイルより力強い、スタミナ系の味
ラーメン袋麺に、煮た背脂と醤油・にんにくを足す背脂系の一杯に近づく
天ぷら・フライ揚げ油として使う(サラダ油と混ぜても可)からっと揚がり、香りとコクが出る
ハンバーグ・餃子赤身のひき肉に刻んだ背脂を混ぜる肉汁が増え、安い肉がジューシーに

味付けアブラの作り方

下ゆでして柔らかくした背脂を細かく刻み、醤油・みりん・すりおろしにんにくと一緒に煮詰める。冷蔵庫に置いておけば、ラーメンにのせても、白いご飯にかけても使える。濃い味なので一度にたくさん使う必要はない。

ラードで揚げるという選択

ラードは常温で固まる動物性の脂で、揚げ物にすると軽い食感と香りが出る。昔の洋食店や精肉店のコロッケがおいしいのは、ラードを使っていたからだとよく言われる。サラダ油の値上がりが続くなかで、自家製ラードを揚げ油の一部に回せれば、食用油の購入量も減らせる。

揚げ油は使うたびに劣化する。こしたうえで冷暗所に置き、色や臭いが悪くなったら固めて処分する。

脂との付き合い方

当然ながら、背脂は高カロリーな食材だ。満足感が大きいぶん少量で効くのが利点であって、量を増やせばいいわけではない。「安い主材料に、少しだけ足す」という使い方を守れば、食費を抑えながら食事の満足度を上げる道具として機能する。

抽出したラードの大きな使い道がもう一つある。小麦粉と組み合わせた生地づくりだ。次の記事で紹介する。

VERDICT
採用
理由
単価が安く、保存が利き、料理の満足度を底上げする。一つの素材で調味料と揚げ油を兼ねる。