FILE 19 ── GEAR

ムーンスターの靴は、なぜ壊れにくいと言われるのか

装備調査

ムーンスターの靴は耐久性が優れているらしい。そう聞いて調べると、出てくるのはファッションブランドというより、工業製品のメーカーとしての横顔だ。学校の上履き、病院や厨房で使われる業務用の靴。毎日酷使され、洗われ、過酷な床で働く靴を作り続けてきた会社が、日常の靴に何を持ち込んでいるのかを見ていく。

久留米で150年

ムーンスターは1873年に福岡県久留米市で創業した靴メーカーだ。現在も久留米に本社と自社工場を置いている。久留米はゴム産業が盛んな土地として知られ、ムーンスターは地下足袋やゴム靴の時代から、日本の足元を支えてきた。

壊れにくさの理由:ヴァルカナイズ製法

多くのスニーカーは、ゴムの靴底とアッパー(甲の部分)を接着剤で貼り合わせて作られている。長く履くと接着がゆるみ、つま先や側面から底がはがれてくることがある。

ムーンスターが得意とするのはヴァルカナイズ製法(加硫製法)だ。生ゴムに硫黄を加えたソールをアッパーに張り合わせ、大きな釜で熱と圧力をかける。ゴムが化学的に変化して硬化し、ソールとアッパーが一体になる。手間と設備が必要な製法で、国内でこれを行うメーカーはごくわずかだとされる。

一般的な接着製法ヴァルカナイズ製法
底の付け方接着剤で貼る熱と圧力でゴムを加硫して一体化
底はがれ経年で起きることがある起きにくい
履き心地製品によるゴムがなじみ、屈曲性が出る
製造の手間少ない大きい(釜・工程が必要)
製法の違いが、底はがれのしにくさに直結する。

810s(エイトテンス):業務用を日常に

ムーンスターには、キッチンや医療の現場向けに作ってきた業務用シューズの機能を、日常の靴に落とし込んだ「810s」というシリーズがある。代表的なモデルの「KITCHE(キッチェ)」は、厨房用シューズがベースだ。

  • 油や水で濡れた床でも滑りにくいように設計されたソール
  • 汚れを拭き取りやすい合成皮革のアッパー
  • スリッポン型で着脱が楽
  • 価格は税込5,500円

雨の日の外出、ガレージでの車いじり、台所に立つ時間が長い日。水と油と汚れに強い靴は、作業靴と普段履きの境目にちょうどはまる。

使い分けの考え方

場面求める性能選び方
雨・ガレージ・台所防滑、耐水、拭ける表面810sの業務用ベースのモデル
街歩き・長時間の歩行底の耐久、屈曲性ヴァルカナイズ製法のキャンバススニーカー
重い資材・工具を扱うつま先の保護先芯入りの安全靴(JIS規格品など)を別に持つ

普通の靴と安全靴は別物

ヴァルカナイズのスニーカーや810sは丈夫だが、つま先を守る先芯は入っていない。単管パイプやブロックなど重いものを扱う作業では、安全靴を履く。

検証したいこと

  • 毎日履いたとき、底がすり減るまでに底はがれが起きないか
  • 雨の日のマンホールや、油の浮いたガレージの床での滑りにくさ
  • 泥や油汚れの落ちやすさ
VERDICT
評判は高い・検証予定
理由
製法と業務用の実績に裏づけがある。価格も手が届き、買い直しやすい。