FILE 11 ── POWER & DATA

ポータブル電源を買わずに、リン酸鉄セルで電源を組む

動力構想

停電対策に、キャンプに、車中泊に。ポータブル電源は売れ筋の商品だが、容量を増やすと価格は一気に跳ね上がる。そして中身は、電池・制御基板・インバーター・充電回路を一つの箱に封じたブラックボックスだ。基板が一つ壊れれば、箱ごと修理に出すか買い替えになる。そこで編集部が構想しているのが、リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)のセルを買い、部品ごとに分けて電源を組む方法だ。

ポータブル電源の何が割高なのか

ポータブル電源の価格には、電池そのもののほかに、一体化した筐体の設計、ブランド、保証、流通のコストが含まれている。それ自体は不当ではない。問題は、部品の一つが壊れたときに、残りの健全な部品ごと手放すことになる点だ。一体型は便利さと引き換えに、修理の自由を差し出している。

自作の電源では、電池、保護回路、充電器、インバーターを別々の部品として持つ。どれかが壊れても、その部品だけを替えればいい。容量が足りなくなれば、セルや電池パックを足せる。

なぜリン酸鉄(LiFePO4)なのか

  • 熱暴走しにくい。スマートフォンなどに使われる三元系のリチウムイオン電池と比べて、正極材料が熱的に安定しており、発火のリスクが低いとされる。
  • サイクル寿命が長い。充放電を数千回繰り返せる製品が多く、毎日使う用途でも長持ちする。
  • 電圧が扱いやすい。セル1本の公称電圧は3.2V。4本を直列にすると12.8Vになり、車やDIYで一般的な12V系の機器と相性がいい。

弱点は、同じ容量なら三元系より重くかさばること。据え置きや車載の電源なら、大きな問題にはならない。

基本の構成

部品役割
LiFePO4セル電気をためる本体。同じロット・同じ容量のものをそろえる
BMS(バッテリーマネジメントシステム)過充電・過放電・過電流・温度を監視して電池を守る。各セルの電圧をそろえるバランス機能も持つ。省略してはいけない部品
ヒューズ・ブレーカー短絡時に大電流を遮断する。電池のすぐ近くに入れる
MPPTチャージコントローラーソーラーパネルの電力を効率よく電池の充電に変換する
DC-DCチャージャー(走行充電器)車の発電機から、サブバッテリーとして安全に充電する
インバーター直流を家庭用の交流100Vに変える。正弦波タイプを選ぶ

電圧は用途で決める

12V・24V・48Vのどれで組むかは、何に使うかで決まる。車載や小さな小屋の照明・通信なら、部品が豊富な12V系が扱いやすい。家庭の家電を長時間動かすような大きな出力が必要なら、同じ電力でも電流を小さくできる24Vや48Vのほうが、配線を細くでき、損失も減る。最初から大きなシステムを組むより、用途を決めて小さく始め、必要に応じて拡張する。

組み込み先の候補

安全について

  • 大容量の電池は、短絡させると工具が溶けるほどの電流が流れる。端子に触れる作業では絶縁した工具を使い、指輪や腕時計を外す
  • LiFePO4は低温(一般に0℃以下)での充電が電池を傷める。寒冷地では温度保護付きのBMSを選ぶ
  • 配線の太さは流す電流に見合ったものにする。細い線は発熱の原因になる
  • 家の配線(屋内配線)に直接つなぐ工事は電気工事士の資格が必要。自作の電源は、インバーターのコンセントから機器をつなぐ範囲で使う
  • 海外通販のセルは品質のばらつきがある。届いたら容量と内部抵抗を確認してから組む
STATUS
構想中
次の一歩
用途を一つに絞り(車載か小屋か)、12V・100Ah程度の小さな構成から組む。