FILE 23 ── CONTINGENCY

山林を買って拠点にする前に、確かめておくこと

有事調査
境界杭の立つ山林の斜面と、切り株の上の地図と方位磁針

「いっそ山を買って、自分の拠点をつくりたい」。地方の山林は、坪単価にすれば驚くほど安く売られていることがある。だが、安いのには理由がある。道がない、水がない、境界がわからない、そして一度持つと手放しにくい。買う前に確かめることを知らずに契約すると、拠点ではなく負担を抱えることになる。編集部の下調べとして、山林を買う前の確認事項をまとめておく。

買ったら90日以内に届出がいる

森林の土地を売買や相続で新しく取得した人は、面積の大小にかかわらず、所有者になった日から90日以内に、その土地がある市町村へ届け出る必要がある(森林の土地の所有者届出制度)。国土利用計画法の土地売買の届出をした場合は不要になる。届け出なかったり、うその届出をしたりすると過料の対象になる。

この制度の対象は、各都道府県が定める地域森林計画の対象の森林だ。登記の地目が「山林」でなくても対象になることがあるので、市町村の林務担当に確認しておく。

契約前に確かめること

山林を買う前のチェック項目
項目確かめることなぜ大事か
道公道から車で入れるか。私道や他人の土地を通らないと入れないか入れない土地は、資材も運べず、売るときも買い手がつかない
境界境界の杭や測量図があるか。隣の所有者と境界が確認できているか山林は境界が不明なことが多く、後でもめる原因になる
水沢や湧き水、井戸を掘れる見込み。水利の権利水がなければ、畑も生活も成り立たない
電気・通信電柱がどこまで来ているか。携帯の電波が入るか引き込みの工事費は、距離によっては土地代を上回る
法令の制限保安林、農地、都市計画区域、土砂災害の警戒区域などに当たらないか木を切る、小屋を建てる、土を動かすことに許可が要る場合がある
災害市町村のハザードマップ。斜面の向きと傾き、過去の崩れ拠点のつもりが、いちばん危ない場所ということもある

持ち続けるコストと、手放しにくさ

  • 固定資産税。山林は評価額が低く、課税標準額の合計が30万円未満なら免税点以下で税がかからないことも多い。ただし、宅地に変えたり建物を建てたりすれば話は変わる
  • 管理の手間。草刈り、倒木の処理、境界の見回り。放っておくと、隣地や道に迷惑をかける
  • 売りにくい。買うのは簡単でも、売るのは難しい。相続した家族の負担になることもある

どうしても手放せない土地については、国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」もあるが、相続で取得した土地が対象で、建物がないことや境界がはっきりしていることなどの条件と、負担金がある。最初から「出口」を考えて買うのが無難だ。

「安い山林」の勧誘に注意

  • 「将来値上がりする」「すぐ買い手がつく」とうたう勧誘は、原野商法の手口と重なる
  • 現地を見ずに契約しない。少なくとも一度は、自分の足で道と境界を確かめる
  • 契約の前に、市町村の林務担当や法務局で、地目・登記・規制を確認する

いきなり買わない、という選択

拠点をつくりたいだけなら、最初から山を買う必要はない。単管の小屋やプランターは、借りた畑や自宅の庭でも試せる。数年続けて、どんな広さ、どんな設備が本当に要るかがわかってから、土地を探しても遅くない。

VERDICT
下調べ中・購入は未定
次の一歩
候補の地域の市町村で、ハザードマップと森林計画の対象を確認する。借りられる畑や小さな土地で、小屋と菜園を先に試す。