FILE 20 ── CONTINGENCY

ヘリウムが止まった年に考える、買えなくなるものの備え方

有事調査
品薄の棚と、途切れた航路を描いた世界地図、ガスボンベ

2026年7月、中国がヘリウムの輸出を一時的に止めた。半導体の製造にも医療にも欠かせないガスだが、ふだんの暮らしで意識する人はほとんどいない。春の中東での攻撃とロシアの輸出規制で、ただでさえ世界の供給が細っていたところだった。遠い国の話に見えるが、構図は家庭にもそのまま当てはまる。自分では作れず、代わりもきかないものほど、ある日いきなり買えなくなる。この出来事を材料に、家の備えを見直してみる。

2026年に何が起きたか

ヘリウム供給をめぐる2026年の主な動き(報道をもとに整理)
時期出来事
3月カタールのラスラファンにある施設が攻撃を受け、ヘリウムの生産設備が止まる。世界の供給の約3割が失われたと報じられた
4月ロシアがヘリウムの輸出規制を導入。アジア向けの割り当てが前年の4割程度に絞られた
7月10日中国が、国内の半導体や医療の供給を守るとして、ヘリウムの輸出を一時的に禁止

報道によれば、中国国内でも輸入ヘリウムの価格は前年の3倍近くまで上がっていた。供給が細ると、各国はまず自分の国を守るために出荷を止める。戦争の当事者でなくても、遠くの攻撃と、その後に続く各国の自衛策の連鎖で、モノは静かに手に入らなくなっていく。

家の中の「ヘリウム」を探す

家庭でヘリウムを使うことはまずない。だが、同じ性質を持つものは家の中にいくつもある。目安は次の三つだ。

  • 自分では作れない。材料も工程も外にしかない
  • 代わりがきかない。特定のメーカーや型番でないと合わない
  • 切れると暮らしが止まる。なくなったときの影響が大きい
三つの条件にあてはまりやすいもの
分類例備え方
専用の消耗品プリンターの純正インク、浄水器のカートリッジ、掃除機の専用パック型番を控え、1つ予備を持つ。汎用品で代わりがきく機種を選ぶ
専用の部品独自規格の充電器・ACアダプター、専用バッテリーUSB給電など汎用の規格に寄せる
常用の薬・医療用品毎日飲む薬、コンタクトレンズ主治医や薬局と相談して、切らさない間隔で受け取る
燃料カセットボンベ、灯油、ガソリン使いながら回す。保管のルールを守る
主食・調味料米、小麦粉、油、塩ローリングストックで、見える棚に置いて回す

備えの原則:買い占めではなく「規格」と「予備1つ」

供給が細るニュースを見ると、まとめ買いをしたくなる。だが、みんなが一斉に買えば品薄が早まるだけだし、保管場所と期限の問題も抱え込む。このサイトが勧めるのは、もっと地味な方法だ。

  1. 代わりがきく規格品に寄せる。独自規格より、USB-C、単三電池、ホームセンターの定番サイズ。いざというとき、どこかで手に入る確率が上がる(道具の定位置の考え方と同じ)。
  2. 止まると困るものだけ、予備を1つ持つ。全部を倍持つ必要はない。切れたら一番困るものから順に。
  3. 使いながら回す。予備はしまい込まず、古いほうから使って新しく足す。期限切れの予備は、ないのと同じだ。
  4. 作れるものは作れるようにしておく。パン、ラード、野菜の一部。小麦粉や背脂のように、原料に近い形で持つと応用がきく。

家の備えに置き換えると

  • 一つの国・一つの会社に頼るものは、そこが止まると代わりがない
  • 規格品は、どこか一つが止まっても別のところから手に入る
  • 予備は量より「切れたときに困る順」で持つ
VERDICT
すぐできる見直し
次の一歩
家の中の専用消耗品と常用品を書き出し、「代わりがきかない」ものに印をつける。印のついたものから、規格品への切り替えか予備1つを検討する。